世界が完全に変わるのだろうか?

2020年5月5日

レポート作成:福田 淳(ARK)

私はタイという国を1996年からお付き合いさせていただき翌1997年のアジア通貨危機、2009年のリーマンショック、2011年のタイ大洪水などを経験したが、今回のような全世界を震撼させている新型コロナ感染症(COVID-19)問題は予測できなかった。誰がこの事態を予測していただろうか。

今回タイ国民の立派なところは、どこぞの国とは違って補償を前提とした休業は求めておらず、頭の切り替えを素早くHealth first(健康ファースト), Life first(人命ファースト)の精神であることに直面した。タイは国として素早く「鎖国体制」に舵を切った。

(2020年5月3日撮影、バンコク内フランスパン屋さん、店内お一人さま限りと徹底したソーシャルディスタンシング)

 

■バンコクの最近の日常(2020年5月5日)
3月26日(木)にタイ政府がタイ全土に対し新型コロナ感染症(COVID-19)の非常事態宣言を発出した。その後、ロックダウンではないが、節度ある自粛によってあらゆる経済を止めての対応策が効果を発し、4月末には感染率は下がった。しかし、第2波感染を懸念して常に状況を注視しながら5月31日まではこの非常事態宣言を継続することとなった。賢明な判断だと思う。

(2020年5月5日撮影、銀行窓口フェースシールドで完全防御)

 

■タイの経済のコア産業は、大きく分類すると3つの柱で形成されている。
1つ目「農業」で昨今、農業従事者の問題はあるものの生産の面では東南アジアの中でも極めて強みはある。今回の非常事態宣言下では、多くのタイ人が避難の意味も含め出身地に戻り、自粛ひきこもりとなっているが、農業の分野での大きな変化を期待したい。

2つ目「工業」で1985年のプラザ合意後の投資の舞台は東南アジアにシフトして電気産業、今では二輪、四輪の生産が重要産業である。この近年で四輪(乗用車関連)の各アジア地域での垂直立上げ生産や、中国の電気自動車の台頭によりタイ国内の需要は伸び悩んでいたが、工業分野は外国人のコア・ビジネス産業である。
自動車製造では2020年5月半ばまでフル生産はせずブレーキをかけた生産体制である。工業の行方は今年は輸出には期待できないので、今後のタイ内需によって経済の方向性が左右するとみている。

そして、3つ目「観光業」であり、昔から”タイは微笑みの国”のキャッチでタイ国内の豊富な観光資源を生かし世界中の観光客を受け入れてきた。一部投資の面でも多くの外国人を受け入れている国でもある。観光産業はタイの魅力でもある。

この農業、工業、観光の3つの産業が揃ってこそ、タイ経済が順調にまわって証拠であると考える。

観光業の分野を少し深堀すると、タイは通常の観光とは別に医療分野を取り入れた”メディカルツーリズム戦略”を導入し、タイでの健康診断と観光のセットで世界中の富裕層を呼び込み成功を収めてきたが、このCOVID-19の影響でメディカルツーリズムのような手法は今後1年以上、受け入れられないことになると思う。

2020年1月~3月のタイへの外国人旅行者数は、前年同期比38.0%減の669万1,574人であり、タイ国政府観光庁(TAT)は4月末の発表では2020年通年の外国人旅行者の見通しを当初の4,000万人から1,600万人に大幅に引き下げた。

(2020年4月30日撮影、スワナプーム空港は閉鎖状態、駐機場は飛行機で溢れていた)

(2020年4月30日撮影、スワナプーム空港はまったく動いていない)

 

■今回のCOVID-19の影響ではヒトの移動や価値観について世界が完全に変わるのだろうか?
確かにこれまで日本も含めたインバウンド頼みの国々は、素早い頭の切り替えが必要であると思う。
事実、アメリカの有名投資家であるウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイ(Berkshire Hathaway Inc.)の年次総会で同社がアメリカの航空大手4社の保有株式を売却したと説明している。

現段階での「ヒト」「モノ」「カネ」の動きを検証してみたい。

「ヒト」:全世界の人の移動は制限されて動いていない。停止状態。

「モノ」:必要な貨物などは動いているがサプライチェーン構造は一部崩れ十分ではない。

「カネ」:ヒト、モノが十分に動いていないが、世界の株式市場(ダウ平均など)は平時ほどではないが機能はしている。何か歪である。

これから世界レベルでは全世界の人々の努力によりCOVID-19を収束させ、沈静化を時間をかけて改善していくしか道は無いと考える。

 

(2020年5月5日撮影、自社シーロムオフィスからの風景)

 

■これからの日本の在り方と変化を考える。

今回の日本での犠牲と痛みは大きい。

今後、大手企業の整理、役所、学校のデジタル化の推進など進まなかった問題が一気に解消されつつあり、日本にとって戦後の焼け野原の闇市のような再出発の機会を期待したい。

これから我々自らが選択するスクラップ・アンド・ビルドのような世の中を創造していきたいと思う。

その為の準備期間として今は時間を使いたいし、既にいくつかの日本での事業アイディアが浮かんでいる。

(続く)

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