タイでの外国人による不動産投資について

(コンドミニアムの購入から売却までの一連の流れ)

2020年7月3日

レポート作成:福田 淳(ARK)

1.まえがき

タイ国では外国人(タイ国籍を有しない者)の不動産取得は大きく制限されていて、その手続きもタイ人(タイ国籍を有する者)とは異なる部分があり、以下はその概要をまとめたものである。

2.購入

(1)不動産の種類

タイで外国人が不動産を購入する場合、一般的に次の3つの方法が取られている。

①コンドミニアム(集合住宅・区分所有の建物)の部屋を外国人(個人名義)で購入、取得・登記する。外国人(個人)は、土地付不動産(一戸建て)は購入できない。

②外国人が資本を支出して、知人のタイ人の名義で取得・登記する。

③外国人がタイ国内に法人を設立して、その法人名義で取得・登記する。

現在、タイで外国人が自身の名義で登記できる不動産はコンドミニアムの一定割合部分のみである。前記②、③の方法では土地付不動産(一戸建て)や土地も購入できるが、その権利は登記されたタイ人(個人・法人)にある。

資金を支出した外国人には権利は無く、将来問題が発生する危険性がある。以下では、①の外国人(個人)の取得・登記の方法のみについて述べる。

タイにおいて、外国人が購入できる不動産の一番の選択肢に、コンドミニアムが挙げれる。タイの法律the Condominium Act B.E. 2522 (1979) によって、コンドミニアムは特別な立場にあり、外国人が共同オーナーとしてコンドミニアムの物件を部分的に直接保有することが認められている。

コンドミニアムの物件については、永久保有(フリーホールド)できる物件や30年の借地権付きなど条件がある。

 

(2)売買契約

購入したい物件が決まったら、その現所有者(または、その代理人)に連絡して、その物件詳細の取引説明を受ける。その際に権利書(日本の登記簿謄本に近いもので、不動産の概要と権利関係が記載されている書類)を確認することをお勧めする。

日本の法務局の不動産登記部門に相当するタイの官庁は内務省(Ministry of Interior)所轄の土地局(Department of Land)(タイ語:クロムティディン)と呼ばれ、購入したい不動産物件の所在地を所轄する土地局で申請すれば、その不動産の権利書の写真(コピー)を入手できる。(独自に現在の権利関係を確認することができる)併せて、係官に外個人自身が購入することを示して、登記に必要な書類などについて説明を受けておくことが必要。

最終的に購入を決定したら、現所有者との間で、売買契約を結ぶ。この際に作成する契約書は双方間の私的なもので、以下(4)で記す契約書が公的な契約書となる。

 

(3)資金の送金処理

外国人がコンドミニアムの部屋を自分の名義で登記する為には、その全資金をタイ国外から外貨(タイ通貨バーツ以外の通貨)でタイ国内に送金しなければならない。

その後、送金口座のあるタイ国内の金融機関で不動産購入の為の海外送金証明書「外貨取引報告書」(Foreign Exchange Transaction Form)が必要。

タイに外貨を送金したという証明書をタイの受取先金融機関で発行する。

過去は「THOR.THOR.(トートー)3」という名称の書式)

一般的には、タイ国外の銀行から外貨で、タイ国内にある自分名義の銀行口座へ送金する。

この際に、送金の際の送金目的欄には“For the purchase of a condominium in Thailand.(タイでコンドミニアムを購入するため)”と明記すること。

タイの銀行口座には、その外貨はその時点の所定の率で為替換算されたタイバーツで入金(着金)される。

タイの銀行で入金を確認した後、銀行の外国部門(外為部門)でコンドミニアムを購入することを示して、土地局宛ての文章(代価に相当する外貨を導入したことを証明するもの)を発行取得する。

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追記(注): タイ国内に外貨送金する場合、外貨送金証明書の受取人の名前と、売買契約書に記された不動産購入者の名前は同じでなければならない。

(4)土地局での登記

土地局で現所有者と会い、公的な契約書を作成する。ここには、不動産の概要、双方の個人情報事項(氏名、住所など)売買金額の情報などが記載され、双方が署名する。

この金額に基づいて登記手数料、税額などが算出される。

土地局では各不動産の評価額を定めていて、仮にこの金額を下回る価格で双方が合意したとしても、土地局の査定額(評価額)で売買したものとして手数料などが算出されるので注意が必要。

その逆として(2)の私的な契約書で、この金額を上回る金額で合意した場合、手数料を低くおさえる為に、双方が合意して、公的な契約書に、実際の取引金額よりも低い金額を記載する場合がある。但し、以降、土地局では、公的な契約書記載の金額で取引したものとして処理される。

移転登記申請書、契約書、(3)の銀行からの書類、旅券など個人を証明する書類を提出し、移転登記が完了すると、所有者として自身の氏名が記載された権利書が交付される。

尚、この際に当事者双方で、コンドミニアム管理組合、電気、水道、電話などの契約名義の変更についても事前合議しておくことが必要。

3.売却

売却時は、2.と同様の手順(自身が「現所有者」となる)で売却作業をすることとなる。

但し、土地局では、コンドミニアムの維持管理費等の清算を完了したことを証明する必要があるので、予め管理組合からの証明を取得しておく必要がある。

受領した代金は、取り敢えず、タイの自身名義の銀行口座に入金する。また、売却により利益が発生した時には、個人所得税の対象となる場合があるので注意。

4.売却代金の送金

タイではタイ国外に送金する場合には、その原資や目的を証明する公的な文書の提示が必要となる。コンドミニアムの売却代金を国外(第三国)へ送金する際には、最初に土地局から売却の事実とその金額を証明する文章を要求し取得する。この金額は売却の際に土地局で作成した契約書記載の金額となる。次に自身が口座を有する銀行の外国部門(外為部門)に土地局からの文章を提示すれば、その契約の範囲で国外へ送金することができる。

5.まとめ

外国人がタイでコンドミニアムを購入・売却する場合の手続き概要を筆者の経験を基にまとめたが、実際に必要書類や手数料などの算出率は、物件の時期によって違う場合がある。事前にその物件を所轄する土地局で詳しく問合せすることをお勧めする。

以上。

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