三菱UFJ銀行会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」のアジアビジネス情報への掲載コラム

長期戦を覚悟!!!「ウィズコロナ」でのビジネスの在り方を考える

「飛耳長目」をご存じだろうか。中国の古典「管子」に由来する言葉で、広辞苑には「遠方のことをよく見聞きする耳目。物事の観察に鋭敏なこと」とある。幕末の志士、吉田松陰(1830~1859年)が、高杉晋作や伊藤博文らを排出した萩の松下村塾で、若者らに情報収集の大切さを説いた言葉としても知られている。

新型コロナウイルス禍にあって「飛耳長目」の重要性は、さらに増しているように思われる。

2019年12月、中国湖北省武漢市において世界で初めて新型コロナウイルスの感染が確認されてから約1年9カ月。現在、感染力の強いインド由来の変異株「デルタ株」が猛威を振るっており、2021年8月17日世界保健機関(WHO)によると全世界の感染者は2億1200万人を超え、死者は440万人 を突破した。一方、世界の新型コロナワクチンの接種回数は累計約50億回に達し(2021年8月25日現在)、そのスピードも徐々に上がっている。だが、問題はワクチン供給に格差があることだ。

例えば、タイでは必要回数の接種を終えたのは人口の10%にも満たない。警官隊と衝突するなど最近、激しさを増している反体制デモでも、ワクチン不足解消は主要な訴えとなっている。タイでは感染の第3波の真っただ中にあり、2021年8月25日現在の感染者数の累計は108万3951人で死者は9,788人。依然として収束の兆しが見えない状況である。徐々にではあるが、タイの日本人駐在員も日本でのワクチン接種を目的に帰国する現状を目にする。

タイ中央銀行(BOT)は、タイのように国の経済資源となる産業が観光である場合、コロナ危機前の2019年の経済水準を回復するまで3年以上かかるとの見通しを公表している。私自身は、2024年第1四半期までは厳しい現状が続くと予測している。

こうした状況を考えると、海外出張のハードルはますます高くなると言わざるを得ないだろう。一部の国を除けば、隔離によって往復で1カ月、身動きできなくなるのは痛い。LCCでの格安海外旅行なども過去の話である。

とはいえ、ビジネスにおいては「そろそろ現地を訪ねた方がいいのだが」と、不安を感じているビジネスパーソンも多いはずだ。取引先の社員が在庫品を横流ししたり、怪しいペーパーカンパニーを設立し、そこに業務委託しているようなふりをして委託手数料をだまし取ったりするケースは「コロナ禍以前から海外ビジネス『あるある』だった」と東南アジアに拠点を持つビジネス系コンサルタントはコメントする。

そうした事態を放置していると、企業の経営ばかりかガバナンス的な評判にも悪影響を及ぼしかねない。だが、一体どうすれば--。その「葛藤」に着目して、弊社ではシンガポールのパートナー会社と、これまでのノウハウ提供を活用し、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の調査員が写真とビデオを収録した「現地訪問調査レポート」事業を近日開始する。ASEAN各国にいる信頼のおける調査員が、現地を直接訪問し、対象となる事務所や倉庫の看板、所在地周辺などの写真や動画を撮影し、実態を確認。早ければ依頼から1週間以内に「現地訪問調査レポート」として需要家に対してメールやSNSで即座に納品するというビジネスモデルである。

これからの海外ビジネスは業態を変化させ、コンプライアンスチェックの重要性はますます高まり、どんなときでも怠ることはできない。 そんな今だからこそ、海外の取引先の入念な格付けや情報のアップデートは欠かせない。調査員が依頼主の『耳』や『目』となって現地を訪問・調査し、金融機関などの専門家と連携する「ウィズコロナ」でのビジネスの在り方を提言したい。

M000908-6(2021年8月25日作成)

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